Installation


不自然なほど急速に夜が訪れた。
太陽が燃え尽きる五十六億七千万年後の闇が、
今あらゆる命を覆い尽くそうとしている。
何もかもが消えてゆく中、
はじまりも終わりもなかった無限の輪に、
最後の部屋が現れた。
近づくと見えなくなる言葉は、誰かの記憶。
でもそれは、あなたのものでもある。
よく思い出してください。
このままでは何もかも呑み込んでしまう暗闇に、
あなたが思い出す記憶が光をもたらす。
全ては鏡。
そこにほんの少しの光さえ与えられれば、
もう一度無限がはじまる。
円環の継ぎ目
2022.4 - 2022.11

人は他者を思うことで自分を見つめ、他者を通して自分を形成している。
舞台は再構築された仏間的空間。
非現実の表現を通して鑑賞者に現実を、失われた物への再認識を促す。
それはどこか懐古的でありながらも、新しい記憶体験である。


ここは記憶の海。
あるいは、死者の国に最も近い波打ち際とも言えるでしょう。
せめぎ合う言葉は全て誰かの思い出のかけらであり、遺言でもあります。
言葉の持ち主は既に海の先。
長い旅の途中ではぐれてしまったのか、はたまた誰かに知って欲しかったのか、
残された私たちにはわかり得ないことです。
偶然にもここにいるあなた。
言葉が持ち主の元へ帰れるように願ってはくれませんか。
そうすれば、時間がかかってもたどり着くはずです。
そして、いつかあなたも死者の国へ降り立った時、
思いを馳せた誰かに再会するかもしれません。
記憶の海
2021.05 - 2021.09

「通信のオルタナティブ」という課題に対して、
お盆に行われる灯籠流しにインスパイアされ「死者との通信」をテーマに掲げた。
舞台は死者の記憶や言葉が漂流する波打ち際。
鑑賞者がそれらに出会い、また海の先へ無事帰れるよう願い呼びかけることで
死者との通信を試みた。

